不治の病といわれていた歯周病は、今日の医学の進歩により改善しつつある。
歯周組織の再生には特殊なテクニックが必要であり、適応症の診断が重要になる。現在の最先端の治療法には、Emdogainを根面に塗り歯根膜組織を再生する方法である。塗るだけで組織が再生する夢のような薬だが、やはり、骨欠損の状態、歯周ポケットの深さなどさまざまな要因を見極めて手術計画を立てなければならない。患者サイドでは、喫煙の有無、全身疾患の有無などの多くのチェックが必要になる。
インプラント治療という言葉は、世間一般に認知された治療法となっている。その反面、医療事故、訴訟など多くの問題を抱える治療法にもなっているのが事実である。歯が無くなるのにはいろんな状況が考えられ、その状況に応じたインプラント治療が必要になる。インプラントは、骨に穴を開け、その中にインプラント体を入れる方法であり、骨がないとインプラントは埋入できない。たとえば、歯周病や交通事故などで歯牙を支える骨(歯槽骨)が無くなってしまうとインプラントは埋入できないのである。また、残っている骨に埋入したとすると、もともとあった歯牙の位置からはずれてしまう。その状態で、上部構造(インプラントの被せ物)を装着するとしっかり咬めなかったり、上部構造が数年で壊れてしまったり、インプラント体自体が折れてしまうことがある。では、このようにならない為にはどのようにすればよいのか。理想としては、無くなった骨を元にもどして、もともとあった歯牙の位置に、インプラントを正確に埋入することである。このことを考えると、インプラント治療というのは、ただインプラント体を埋入するだけではなく、最終的な咬み合わせがどうなるのか?その咬み合わせを作るためにはどれだけの骨を作らなければならないのか?インプラント体の周りの歯茎(歯周組織)の状態はどうなのか?インプラント体に隣接する天然歯の状態は健康なのか?・・・・・といった様なインプラントを埋入するにあたって成功させるためには、一口腔一単位と考える治療計画をたて、「トップダウントリートメント」という最終的な被せ物(最終補綴物)を考えた、治療法が必要とされる。そのためには、ほとんどの症例で、骨を再生させる技術が必要になる。
インプラント治療で骨の再生が特に必要とされる部分が上顎の臼歯部である。日本人は特に上顎洞底と歯槽骨頂との距離が短く、上顎の臼歯部が欠損すると上顎洞が延出してくるとさらに上顎洞底と歯槽骨頂の距離が短くなる。上顎洞は空洞なのでそこに骨を作る上顎洞挙上術を行わなければインプラントは埋入できない。インプラント手術の技術がない歯科医は、義歯を進める。上顎洞挙上術の技術がない歯科医師は上あごにはインプラントができないと話すであろう。また、手術を行う際には、手術室があるのは当然だが、患者さんの全身状態の管理が必要になる。手術中はモニタリングをし、必要であれば、麻酔医の監視下で静脈内沈静法を行う。静脈内沈静法は、全身麻酔ではなく手術中だけ眠ってしまう方法で健忘効果もあるため患者さんによって、「手術自体をまったく覚えてなく、思ったより楽に手術が受けることができた。」と言われる人も少なくはない。できるだけ患者さんが手術に対して不安や緊張感を取り除くようにすることも手術の多くなる患者さんや、全体的な治療計画を進めていく上で重要である。
日本の一般開業歯科医院の歯科医師は、多くは一人でいろいろな治療を行っている。しかし、インプラント治療を行うのに対しては専門医が行うことが推奨される。